洋館アート

赤崎伝三郎の私邸として建てられた洋館は、自分の居住空間ではなく、来客者をもてなすための建物として作られました。
特に洋館が作られたのは、海外で活躍した赤崎伝三郎を知る人が、日本人だけでなく外国人が赤崎亭を訪れた時に、ゆっくりとくつろいでもらうためのゲストハウスでもありました。
そのため、フランス領マダガスカル島で永年暮らした赤崎伝三郎はそのセンスを活かして、部屋の天井が高く、シンプルでありながら芸術的なデザインが至る所にちりばめられています。

洋館は、レトロな窓の作りと高くて白い天井が特徴です。
昭和初期の洋館建てには、当時の匠の技がふんだんに盛り込まれています。

和洋折衷の洋館の6畳の間には、畳が敷いてあります。
崎津教会が日本では珍しい畳敷きであるように、白磯もまた違和感がなく溶け込んでいる天草ならではの風景です。

1階の洋室には板張りの床の部屋があります。
アンティークなベッドですが、外国の田舎のホテルを感じさせる作りです。

洋館の1階から2階に上る階段には、独自の飾りがほどこされています。
洋風と和風が調和した木の温もりを感じる洗練されたデザインです。

階段を上ると待ち受けているのは昔ながらのモスグリーンの2脚の椅子です。
今ではこの色合いの椅子には滅多に巡り逢えない、昭和初期のものです。

緑色の椅子のそばには和式のお化粧室がありますが、ここの欄干の飾りが素晴らしすぎます。
ヨーロッパの美術工芸品を思わせるゴージャスなデザインに見とれてしまいます。

どこから見ても美しいデザインですが、上から見るとこんな感じです。
アンティークなお化粧室にマッチして心の贅沢を味わえます。

2階の部屋は3間あり、それぞれが昭和の洋室を感じさせます。
この部屋は、大きな窓に重厚なカーテンがとてもいい感じです。

こちらの部屋は、高い天井にレトロな照明と、簡素でモダンなベッドが特徴です。
ベッドはやや硬めですが、体にしっくりなじむ感じです。

木枠の窓ガラスから外を見ると和館の玄関の屋根と緑の木が見えます。
これは額縁の中に納まっている風景のようで、なんとも素敵です。

ベッドに横になり、天井を見上げると美しい天井のデザインと白百合のような照明が目に入ります。
どこを見ても美術品のようで、心が満たされます。

この部屋の照明を真下から見上げた絵です。
レトロなヨーロピアンを感じますが、ここでもフランス領マダガスカル島で赤崎伝三郎が暮らした余韻を感じます。

昭和18年5月5日、木下恵介監督が初の映画監督として「花咲く港」ロケ地として高浜を訪れ赤崎亭に泊まりました。記念写真の中央の赤崎伝三郎が72才の時でした。
往年の映画スターたちは、西の果ての天草島の豪邸に宿泊した時、大いに驚き、ご満悦だったと察します。